10/30に開催された全日本学生マイクロマウス大会と,11/19,20日に開催された全日本マイクロマウス大会に参加してきました. 今年は新しい機体を作っていないこともあり,十分な調整期間があるはずだったのですが,主にモチベーションの低下(後述)とまとまった時間の取れない日が続いたという理由から,ソフトウェアアーキテクチャの微妙な改修とハードウェアのメンテナンスをするにとどまってしまいました. などと言い訳を書きましたが,要は自分が情熱を注げなかっただけ.改めて意欲を維持することの難しさを痛感しました.
通称変則4輪と呼ばれるスキッドステアタイプのこのマシンはもっと遊べる対象なので,今後も大会等関係なくいじっていきたい所存です. 来年こそは変な機体で出場したいものですが…
結果1. 学生大会
記録
よく覚えてません.それから,学生大会のページにも結果が載っていません. たぶんなかったのでしょう.なかったことにしよう.
認定証を見たところ,記録は26秒595,探索走行の記録です. 記憶をたぐってみると,2回ほど探索して,その後3回連続最短走行に失敗したような気がしてきました.
トラブル
この日の朝,出走前に控室の調整迷路で最終調整をしていたのですが,1区画進む度にガクガク止まるような挙動が見られ,急遽ソフトウェアの変更を迫られる事態になりました. 原因はというと,学生大会の2,3日ほど前に迷路探索アルゴリズムを変更したことにありました. アルゴリズムの変更により計算時間が増大し,その結果,壁を見た後に計算して次の行動を決定するまでに時間がかかってしまい,先述のガクガクした動きに繋がっていました. デバッグのためにゴール座標を(1,0)にしたままで,その後(7,7)に設定しないまま調整をおこなっていたため,問題の発見が遅れたというわけです.
この問題は,複雑な経路導出アルゴリズムを探索走行時にリアルタイムに実行させようと考える際に通る道だと思いますが,例えば以下のような方法で回避できます.
- ターン前に数mmの直進をはさみ,経路の計算中はその部分をとりあえず走らせておく
- 計算中は壁センサまわりの処理をスキップする
- 走行中はなるべく軽量なアルゴリズムを使い,袋小路で複雑なアルゴリズムを使用するように変更する
私は今回1番目の方法を取り,7mmの直進をターン前後に入れることで計算時間を稼ぎました. 探索走行のスピードは通常のときは550mm/sにしているので,13msほどの時間稼ぎができることになります.やったぜ. ただし,この方法に頼りきって例えば15mm直進とかにしてしまうと,今度はターン自体が厳しくなってくるのでご注意を.
また,学生大会後におこなった改修ですが,今後ハーフサイズ競技への参入やSTM32F411化を目論んで,アルゴリズムの内容はそのままに計算コストの軽量化を行いました(そのうち書くかも).
その他
- サーキットを走るXiphosuraさんを追いかけながら動画を撮っていたら,追いつけなくなったあたりで迷路の角にすねをぶつけてしまい,その後3日ぐらい痛みが消えませんでした(ひどい,もう羽目は外さない)
- あとでわかったことですが,この大会と東日本大会では壁制御が(たぶん)全くかかっていませんでした…
結果2. 全日本大会
記録(予選)
予選タイムは6秒078と,朝きちんと走っていなかった割に思ったよりも好タイムが出ました.何でだろう. ちなみにですが,5回の走行をすべて完走できたのは全日本大会ではたぶん初めてで,何かと行きの探索でコケてしまったり最短走行が全く決まらなかったりしてしまっていたのですが,この予選は良い例外だったようです.
詳細結果
走行 | モード | タイム |
---|---|---|
第1走 | 0:24:177 | 探索(パラメータ:2/4) |
第2走 | 0:09.321 | 最短(パラメータ:1/7) |
第3走 | 0:07:472 | 最短(パラメータ:3/7) |
第4走 | 0:06:078 | 最短(パラメータ:4/7) |
第5走 | 0:06:282 | 最短(パラメータ:5/7) |
第5走の方がパラメータは上なのになぜ遅いのかと言いますと,このパラメータは直線最大速重視のパラメータで,細切れのターンが多い今回の迷路には不適だったためです.
記録(決勝)
動画は毎度お世話になっているNVS様からです(本当に頭が下がります):
詳細結果
走行 | モード | タイム |
---|---|---|
第1走 | R | 探索(パラメータ:2/4) |
第2走 | R | 探索(パラメータ:1/4) |
第3走 | 0:24:622 | 探索(パラメータ:2/4) |
第4走 | 0:29:150 | 探索(パラメータ:2/4) |
第5走 | R | 最短(パラメータ:3/7) |
あれです,ボロボロってやつです.
トラブル・探索アルゴリズムについて
動画をよく見ると,最後の最短走行で未探索の壁を45度で進入してからV90を経て連続180度ターンのゾーンに進入しようとしています. これは完全なソフトウェアの不具合ですねぇ… 気になったのでシミュレータを走らせてみようと思いましたが,そういえばシミュレータにクラッシュ時の挙動をシミュレートする機能はありませんでした Ω\ζ°)チーン 今度実装して確かめてみようと思いますが,おそらく後述する.
探索が正常に終了したという仮定で出たものがこちらです:
V90にかなりコストをつけるようにしているため,180度ターンの方を選んでいます.思惑通りなのですが,走らなければ意味がない… 上側の櫛が抜けていますが,これは不要と判断して探索していないためです. 実は今回未知の区画を優先して見に行くコードを試験的に追加していたのですが,無駄な所を見に行く・幅優先的になって帰ってくるまでに時間がかかるだけで,16x16程度のサイズではあまり意味がないというのが私の意見です. 走行時間を評価関数にして最速軌道を導出している方は16x16でも全探索したくなるのでしょうけど,私は現在そういったアルゴリズムを採用していないため,全く意味がないのです.なぜ入れた.
私の探索アルゴリズムは,まず最初にさっさとゴールすることを優先してほとんど最短距離でゴールまで到達します. その後に,経路の集合を表現する重み付きグラフのコストを最小化するような経路が1つ(または2つ)に確定するまで残りの区画の探索を続け,スタートに帰ってきます. 24秒622という探索タイムは,探索走行の直進スピードが速い海外勢や瑞さんとほぼ同様のタイムで,個人的にはアルゴリズムが賢いと自負していますが,どうなんでしょう… 運がいいだけか…
モチベーションの低下
マウスをはじめて作った4年ちょっと前は,もうちょっとフレッシュな気分で新しい技術チャレンジに胸を躍らせていたように思います. 最近,ほかの参加者の方とお話しさせていただいたりブログを拝見したりしているうちに,マイクロマウスに特化した定石が見えると同時に,自分のポリシーと定石のギャップに悩まされていました.
速いマウスを最短距離で作りたいなら,みんなが使っている定石に頼るのが賢明でしょう.しかし,そこで得て使った知識は他の人が既に辿った道のなぞり直し,歯に衣着せずに言ってしまえば上位陣の劣化版コピーになってしまいます. もちろん最初の2,3年はそれでいいと思いますし,それによって基礎の蓄積ができるのでむしろ良いと思うのですが,参加歴4年ともなるとコピーをひたすら調整して詰めるのは楽しくないし時間がもったいないという思いが強くなってしまい,今年は特にモチベーションを保つことが難しくなりました. 宇都宮さんもおっしゃっていましたが,「純粋にマイクロマウスを楽しむ」ということが大事なのかなあと思います.
今後についてですが,ハーフサイズに参入というのは選択肢としてはあるのかなとは思います. しかし,別競技とはいえ,またしても先人の後追いをしなければならないと思うと上記の理由から挫折してしまいそうではないかと心配です. 現時点では,来年はとりあえず自分の作りたい思うがままの機体をクラシック競技に出して,新しいコンセプトをほかの皆さんに披露できれば嬉しいかなと考えています. ヒントとしては「桂馬飛び,こじまターン拡張」です.
その他
毎年のことですが,まず運営にかかわられた方々に最大の敬意を表します. 4年もお客さんとして参加してしまっており,大会の運営に全く貢献できていない私をどうかお許しください.
今年は東工大ロ技研からも出場メンバーが増え,新たにチームを結成して出発しようとしているところです. その折には,是非チームとして東日本支部に加入させていただき,大会のお手伝いや支部での交流を通じて,この素晴らしいマイクロマウス大会を継続的に実施できる体制づくりに微力ながら貢献できればと考えております. みなさま本当におつかれさまでした.ありがとうございました.
雑多なハイライト:
- 試走会で変な不具合を2,3個見つけて直すという,クソ実装能力と神デバッグ能力を同時に発動してしまいました
- 今年は競技終了後に迷路がすぐに片付けられてしまい,ちょっと悲しかったです
- フレッシュマン迷路の走行タイムは7秒78でした.だめだ,エキスパート名乗れない
- 明星大学の食堂は安くてボリュームもあり,高くて量が少ない国立大の学食を知っている我々からすると,とてもうらやましく思いました(それ以上に学費高いんだろうなあ)
- 昨年も今年も決勝の出走が午後一で,お昼はきつねうどん240円を5分でかきこむという時短っぷりでした.おいしいごはんをゆっくり食べたい…
- 走らない走らない詐欺はMiceの伝統芸能なんでしょうか(Exiaの人とかnocheの飼い主とか…確かFNDも…)
おめでとうございます( ・∇・)走んねぇ走んねぇ言ってたけど走りましたやったね( ・∇・)
— nano (@popopopooonnano) 2016年11月20日 - ピニオンはロボメカの伝統芸能みたいですけど,うちは何が伝統芸能なんだろう…大会ギリギリの製作かな…(そしてなぜか走る)
- 田代チャレンジはすごくエキサイティングなイベントで,とても興奮しました.あまりの興奮に外野から茶々を入れてしまいすみません
- まついさん(ベストマウサー)とFND(田代賞)の濃厚な関係を激写してしまいました(あれなので載せませんけど)
- 吸引マウスが髭剃りになるということは,Miceでは当たり前の事実らしいです
- Miceのようにほかの参加者の憧れの的になるようなチームが作れればいいなぁと思いました.勘違いしないでよね,たけゆたさんのことは褒めてないんだからっ
- マイクロマウス用語辞典みたいなのが必要かもしれないなと思いました.記事を書こう
- ハセシュマウスの人が変な機構を思いついたようです.来年が楽しみ
- マウスは楽しんで作ろう(大事なので再掲)
- ねこ好き勢を数人発見したので,オフシーズンにもふもふ行きたい
チームとしての参加報告はロボット技術研究会の公式ブログに近日掲載予定です.